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NSSB小説

549.[校正中]電子書籍第五弾 仮面夫婦(タイトル仮)

549.[校正中]電子書籍第五弾 仮面夫婦(タイトル仮)

※まだざっくりとしかで来ていないので、後日アップしますw
少々お待ちを´д` ;

仮面夫婦


まえがき
 私の部下である宇多飼の元に現れたのは、それはみすぼらしい格好の男だったという。彼が探していたのは、写真に写った女性だった。そこに写った女性は、一般的にいう普通の女性だ。特に何か大きな事件に関わるような人間には決して見えなかったが、その男が彼女に入れ込んでいたのは見て取れたそうだ。男は彼女のルックスや性格などの長所をぎこちなく並べ立てる。そして最終的な依頼は彼女の捜索だという。彼女は別れ際に男から一千万ほど借りた後、姿を消した。男はただひたすら彼女を心配して、田舎で帰りを待っているという。依頼料は一万円。男にはそれ以上の予算はなく、これ以上の金額が必要であると話した所、肩を落として帰ったという。もちろん有能で人徳のある宇多飼はそんな野暮なことはしないが、私にとってある意味最も厄介な人物が事務所で待機していたことが大きな原因だった。

一 『階段』


「綺麗な絵ですね、隅田川ですか?」
私の質問に、その類稀なる天才画家は流暢に答えます。
「ええ、これは私の最も愛着のある景色を元に描いたものです。鳴かず飛ばずの時期にこの景色を見て何度も将来の夢に想いを馳せました。過去の辛いことも、私の涙とともに水に流してくれたのが隅田川なんです。」
「詩人ですねえ。天才は他の道にも通じますか」
「いえ、とんでもございません、表面こそよく見えますが中は意外と空っぽだったりするんです」
「謙遜ですね。私はあなたの絵が昔から好きでした。恐縮ですが、もう十年前に書いたあなたの絵は好きでした。『階段』でしたね。あの作品は素晴らしかった。まるでそれは、天から授かったもののように降りてきた才能を階段を登りながら迎えに行く。何かそれは地道な積み重ねを象徴し、そして手に入れたような、そんな印象を受けました。」
「あなたの感性は素晴らしい。芸術に通ずるものがありますね。」
「買い被り過ぎです。
ところで先ほどあなたは泣かず飛ばずの時期とおっしゃいましたが、
あなたは地元の芸術大学中から世間に注目されて、そしてすぐに独立して大成功を収められた挫折を知らないお方だと思っていました」
私がそう言うと、三十代でまだ若いはずな白髪まじりの黒髪をかき上げて、何か物憂げに話した。
「いえ、内面の話ですよ。作品に対する思いは、売れようが売れまいが関係無い。常に葛藤を繰り返し自らの満足のいく作品を目指す。しかしアーティストとして満足なんてすることは無いものですから、結局『泣かず飛ばず』。芸術に天井はありませんからね。まあ言葉の綾みたいなもんですが、死ぬまで言い続けるものなんでしょうね」
彼は独特の丸メガネの中にある涙溢れる瞳を見せないように、うつむきながら笑みをこぼした。思った以上に彼を追い詰めたことに、多少の負い目を感じながら、私はその美術館を後にした。美術館は彼の作品でいっぱいだった。多くは、彼の十年前に作った作品がほとんどで、ここ最近のものは、二、三作ほどで彼の言葉は身に染みた。
 彼の名前は、奏巴(そうともえ)。主に絵画の芸術家として名を馳せている彼の美術館は、満員と言わないまでも相変わらずの人気を博している。私はかつての作品『階段』より彼の芸術的な作品に心を癒されてきたために、今回十年ぶりの絵画展でその本人、いや『階段』と出会えることをすごく心待ちにしていたのだ。残念ながら『階段』は数年前に売却されたそうだったが、他作品も含め心を癒され事務所に戻った。まさかこの時に交わした会話が、彼との最後の会話になるとは思いもよらなかった。

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