535!【NSSB小説電子書籍】第3部 妄女の計らい(認可待ち)

お疲れ様です!ギリギリまで粘りましたが、間に合いませんでした!!
とにかく序章載せておきます!認可降りたらアップします
妄女の計らい
最も興奮したのは、彼がドリップしたコーヒーをテーブルまで運ぶその瞬間だ。コーヒーから出た垂直に上がった湯気は、彼が歩く度に尾を引いていく。その尾を引くコーヒーを、まるで可愛がるペットのようにトレーに載せ、彼はそれを丁寧に抱きながら、私の元へと現れる。それは満面の笑みではなく、小馬鹿にしたような笑顔でもなく、コーヒーを淹れる真のバリスタの自信に満ちたような顔だった。彼の顔は、まるでこの空間を格式の違う小さなカフェへと変貌させたようだった。
私の名前は、大石かな子。
仕事はフリーのライターをしていました。小さな頃から本が大好きで、多分物心つく前から本に触れていたんだと思う。文字に秘めた思いから現れてくる登場人物を想像できる活字の小説が昔から好きでした。想像した登場人物は、実際に眼に浮かぶほど想像できました。それが想像できると、テレビに出てくる人、街中にいる人にまで小説の登場人物に重ねて、「あの人はこんな性格だろうな」とか想像するのが好きです。世間ではそれを妄想と呼ぶらしいので、私は自分のことを妄想する女、妄女と呼ぶ事にします。別に嫌な気はしませんね。このお話は妄女と、結ばれることのない男の悲しい事件です。今から話しますね。
取調室にいる彼女は、不気味な笑顔と共に語り出し、その場の捜査員を震え上がらせた。