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500!!【拝啓 全国の剛様】④疑惑の被害者とハッピー・ボム・レター

500!!【拝啓 全国の剛様】④疑惑の被害者とハッピー・ボム・レター


4. 疑惑の被害者とハッピーボムレター


 僕と田中刑事は現場へ着いていた。2軒目の爆破が行われた豊本剛さんの部屋は、アパートの角部屋だ。消防隊の活躍もあって、驚くほど火は早く消し止められたため、今回燃えたのは豊本さんの部屋だけだった。被害者である豊本さん本人は、いま茨城から向かっているらしく、到着はまだかかりそうだ。
「くそ!またや!」
悔しがる田中刑事をよそに、僕は現場へ来なかった春山さんの言葉を思い出し、別の捜査に取り掛かりはじめた。
「田中刑事、今回の事件で少し調べたいことがあるので、早めに本庁へ戻っても宜しいですか?」
「は?単独行動かいな。ちっ!まあええやろ」
「ありがとうございます!」
こういう所がいい加減な田中刑事は、タッグとしては逆にやり易い。すぐさまパトカーで本庁へ戻った僕は、2、3件電話したあと、過去の犯罪事件を取り扱った資料室に行き、ひっそりと調べ始めた。

ここで春山さんの挙げた今回の事件の不審な点をおさらいしよう。

犯人がなぜ「予告」をして爆発するかだ。予告をするというのは、愉快犯の手口としてはよく分かる。警察に挑戦、警察をバカにした上で、見事計画をやってのける。その達成感に浸りたいから犯人は予告するのだ。このような犯人は、ある意味では犯行を『芸術』として捉え、正々堂々の勝負で行うことが多い。それが彼らの美学だ。そして彼らは無実のまま生き残り、自らを芸術家と自尊するのだ。

だとするとだ。今回の犯人のゴールは爆弾による死傷者を出すことなどではない。二件の事件を見れば分かるのだが、家や部屋が燃えること以外には大きな被害は出ていない。例えば一件目の進藤さんを殺害するために爆弾を仕掛けて、失敗したのであれば、二件目の豊本さんに対する爆発はもっと確実な殺害を計画したはずだ。二件の爆破は、被害者の留守を狙ったとしか思えない。

これが彼らの成功とするならば、彼らの目的は、爆破、火災以外にあることになる。爆破と火災の陰に隠れて何かをやってのける気にちがいない。
となると、最も疑わしき人間は、彼ら2人になると気づくのは時間の問題だ。


そして春山さんの事務所で分かったことなのだが、インクの違いから、犯人は違うプリンターを使っていることも分かっている。それにより、犯人は複数、もしくはグループである可能性が増えてきた。もしくは、2件目の事件は模倣犯である可能性すらある。僕は資料室で探しあてた分厚い一冊の本を見つけると、それを空いた会議室で読み始めた。
『海外地下組織犯罪ファイル 担当 春山剛』

僕が丹念にこの本を読んでいた頃、世間のニュースはこの爆発事件で持ちきりになっていた。
そして2日もすると、この事件からある新しい言葉が生まれていた。

「ハッピー・ボム・レター」

それがマスコミ各社、そしてSNSなどで噂されて持ちきりになっていた。
テレビのある芸能人が発した一言で広まったのだが、この言葉は爆発を受けた被害者にスポットを当てた所から始まった。

1件目に爆発の被害を受けた進藤剛さん。
彼の事情をおさらいすると、自営業の金物屋が借金だらけで離婚まで考えていた。しかし今回の爆破で、全焼した自らの商品、さらには自宅にも『保険』をかけていたので、その保険金が下りたのだ。すると、その保険金で借金を返済。その上、別居中だった妻と娘と近くのアパートに同居して、また一から生活を立て直したというのだ。

続いて2件目の爆破で被害を受けた豊本剛さん。彼はもともとミュージシャンを夢見ていたが、その夢を諦めて生活のために保険マンの仕事をしていた。なんという偶然か、それが幸運かは分からないが、仕事のために彼は自らの会社の保険に入っていた。そのため彼の入っていた火災保険の保険金が下りた。そのお金の使い道は、重度の病気にかかった母親が海外で手術を行うために使われることになった。

つまりこの2件。死傷者は出てなくて、下りた保険金で2人は幸せになった。そのためにあのハガキは幸運を呼ぶハガキとして、「ハッピーボムレター」と呼ばれた。保険会社としても、犯人からのこの予期せぬ事態に疑うこともできず、保険金を素直に払うことになった。

しかしこの出来事に面白くないのは警察だ。犯人に犯行を予告された上で実行され、なおかつ犯行を喜ぶような民衆の声が上がっているのだから。血眼になった警察の捜査は当然のように、被害者2人に疑惑がかけていた。
『最後に得をするものが犯人』とは良くいったものだ。警察はこの被害者2人に焦点を当て、生い立ちから仕事に至るまで、聞き込みなどの調査を済ませた。捜査にあがった情報(春山さんからあがった情報)では、犯人は複数、もしくは模倣犯である可能性があったものだから、彼ら2人の自作自演では無いかと、警察は考えていた。
しかし進藤さんと豊本さんには接点が無かった。年齢や生い立ちも違い、当然のようにお互いのことを全く知らなかった。さらに聞き込みからも彼らに怪しい点は皆無で、共通点の見えない捜査は空振りに思えた。

「田中刑事!」
「なんや!?」
「また、送られてきたそうです!!」

捜査会議室に一人の機捜が入ってきた告げた。3度目の『ハッピーボムレター』が世の中に出回ってしまったのだ。少々疲れていた田中刑事は呆れたように聞き返した。

「ほんで今回はどこに行けばいいんや?はがきは何処から届けられた?」
「そ、それが・・・全国に」

今回のはがきは都内だけでは無かった。
北は北海道。南は沖縄に至るまで。なんと日本各地でこのハガキが送られたのだ。
いよいよ「全国」の剛様対する犯行予告をされてしまった。世の中は大きくうねりだした。またもや回り出した情報はマスコミを加熱し、人々は歓喜や恐怖など、異様な状況になった。いかにも犯人に踊らされているようなこの環境の中、僕はある一つのきっかけから、捜査の糸口を見つけることになる。


☆☆☆今日はここまで☆☆☆
とうとう、全国に「ハピー・ボム・レター」が届けられてしまった。
そんな中、捜査の糸口を見つけた榎本刑事。
次回、事件は大きく動きだす。榎本・田中はこれ以上の犯行を止められるのだろうか?

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