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NSSBの日々の活動や、 その時の気持ちを投稿しています。 小さなブランドですが、 今後県外や海外に大きく飛躍していく 成長日記となればと思っています。

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459.いい人のための教科書⑥知能戦の果てに

459.いい人のための教科書⑥知能戦の果てに

6.知能戦の果てに

そう言うと彼は、足を広めに開いてゆったりとした姿勢で私を見た。その目には自信と情熱に溢れていて、私の言葉を待っていたかのような表情だった。随分と落ち着きを取り戻したようだった。

ここで最も大事なことをおさらいしておきたい。私は彼の罪に対して、まだ完全に掴んでいるわけではない。彼が殺人をしているという確たる証拠は無いのだ。ただ状況証拠として、事務所の状況、そして彼のこれまでの行動が犯罪を物語っている。私の推理で彼を追い詰めることは可能だが、成長した彼はおそらくあらゆる言い逃れをして自白しないだろう。

大事なのは、『遺体』だ。
『遺体』の場所を推理する。見つかれば彼は観念するだろうか?


「全てを知っているとは、どういうことですか?」
成長した私は、春山の発言に対して追求した。私は春山の次なる手を知っている。彼は今の推理では私を追い詰めることはできない。なぜなら彼の戦い方は、全て心理戦で相手を崩し、自白させる方法だからだ。つまりこの方法は、『証拠』で相手を追い詰めることができないから、仕方の無い方法なんだ。
彼の次なる手は、『遺体』という『証拠』を私から聞き出そうとする。


「全てです。私の本業は探偵ですから。」
あえて私は正攻法で攻めてみた。私の素性を明らかにすることで彼は多少の動揺をするはずだと。しかし彼の目を見る限り、動揺の色は全く見られない。むしろ待っていましたと言わんばかりの得意顔だ。そんな彼の次なる手は、私の逆手を取りに来るはず。


「探偵ですか。では宇多飼さんの葬式の話は嘘なんですね?
この地部総裁には何の御用でいらしたんですか?」
私は今、先ほどまでの得体の知れない男に対して、『会話の主導権』を握っている。素性を明らかにした彼の切れるカードは、2つ。
真相に踏み込むか、それとも引くか。引くならここしかない。


「はい、実はこの近くで起きている失踪事件、および麻薬事件を調査していまして。」
私は踏み込むしかない。ここでとぼけても、私に不利な状況が続くだけだ。依然主導権を握っているのは彼だが、ここは逆にチャンス。おそらく彼は一般人の振りをして、知らぬ存ぜぬを通すだろう。なぜならこれ以上私が彼を追い詰めることができないと彼は知っているからだ。

「先ほどの話ですね。そういえば思い出しました!
私怪しい人知ってますよ。」
この切り返しはどうだ?恐らく彼は、私が何も知らないというと思ったはずだ。しかしあえてこちらも踏み込むことで、相手の選択肢を一つに絞った!彼は私の誘導に従わざるを得ない。さあ、聞くがいい、その名を!!

「ほう、本当ですか?それはどなたですか?」
私は表情を変えることなく聞いたが、心中驚いた。彼は犯人を知っているだと?
その人物とは一体誰だろうか。私の知らない名前を出すのか、それとも自白するのか?とにかくこのまま彼のペースでは最悪のケースに陥ってしまう。彼よりも優位に立つためには、彼の次なる手を読み、証拠を見つけないといけない。

「それは、猿渡さんという方ですよ、ご存知ないですか?20代後半の年齢で、数ヶ月前に越してきました」
ここで猿渡の名前を出す。彼の出した宇多飼の住所に住んでいた男だ。知らないはずはない。これにより私は春山よりも全てを知っていることをアピールする。ここに導くということは、分かってるはずだ私の最後に出す手を。

「猿渡さんですか。いや、知らないですね。」
なるほど。彼はどうやら私を恐怖で追い込み、殺害する気らしい。彼のズボンの後ろポケットの膨らみは、恐らくナイフか拳銃か。そして、ここまでの情報開示。会話の主導権を握った時の優越感のある顔。トイレから出ていきなり襲わなかったのは精神的に成長した自分がどこまで私に立ち向かえるかを試したのかもしれない。

「そうですか」
地部はそう言うと、右手をズボンのポケットに入れた。その顔は恐々とした笑みで、私に対する積極的な「攻撃」を意味していた。私はその様子を見るや、これまで培った探偵としての経験を活かした大きな賭けに出ることを決めた。致し方ない。証拠も無く、証言も取れないなら。とても危険だが、彼の『芯』を崩すしかない。私は、小声だが、はっきりとその名前を彼に告げた。

「ジス。」
「何?」

私の言葉に彼の顔から笑顔が消えた。

「ジスですよ。ご存知ですか?」
この物語を最初からご覧の方には知っての通り、これは地部が飼っている犬の名前だ。しかしこれは唯の犬の名前ではない。私がこの葬式屋に目を向けた一番の理由がこれだ。『ジス』。彼の先ほどまでの余裕はどこへ行ったのか。一転して少し前の絶望の表情に巻き戻った。
彼の右手はポケットから外れ、正気を失ったように立った。

「私は全てを知ってるんですよ?」
さらに彼に告げると効果は絶大だったようだ。しかし成長した彼をうち崩すにはまだ足りない。彼はまた立ち直ろうとするはずだ。

「な、何のことですか?」
私は春山の言葉に辛うじて答えた。
なぜだ、なぜ奴は『ジス教』について知っている?これは俺が海外で出会った僧侶からの教派だ。誰にも伝えたことは無い。
はっ!そうか、ハッタリだ。お得意のハッタリだ!奴は何も分かっちゃいない。私の愛犬の名前を適当に伝えているに違いない。私は負けない、こんなことでは屈しないぞおおお!私は成長してやるうううう!!

「教本
第2章1条 唯一無二の貴方を大事にしなさい。
第5章4条 貴方の家族のために働きなさい。
第9章1条 勉めて社会に貢献しなさい。
第11章・・・」

「何だと!!」
私は春山の発言に思わず大きな声を出した。教本を読んでやがる。
知ってる、こいつは『ジス教』について間違いなく知っている!私の、私だけの心の言葉を知ってる!!こいつは、本当に私の全てを、私の犯罪を知っている!!
すると妙な耳鳴りが私の耳を打った。それは徐々に大きくなり、それを聞くと私の心は更に大きく動揺した。遠くで聞こえてきて、それは私の家の前で止まった。
パトカーのサイレンの音だ。
「言いましたよね?私は全てを知っていると。」
春山の不気味な笑顔を見て、次に私のとる行動は一つだけだった。

逃走だ!

☆☆☆今日はここまで☆☆☆
成長した彼を打ち砕く春山の推理とハッタリ
全ての結末と全貌は次回、
最終回にて明らかに!!
来週もまたご覧くださいませ( ´ ▽ ` )ノ

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