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NSSB小説

452.いい人のための教科書⑤七つの『嘘』と二つの『予想外』

452.いい人のための教科書⑤七つの『嘘』と二つの『予想外』
5.7つの嘘

 私の名前は春山剛。アパレル会社の社長であり、探偵だ。
とある事件を追って来た私は、この田舎町である志帆奈町に来た。志帆奈町に着いた私の悩みは、今日の宿だった。雨水の下垂れ落ちるバス停で、近くに旅館やホテルが無いか携帯のネットで検索したが、探すことはできなかった。とりあえずバス停にいても始まらないので私は町へと足を運んだ。

10分ほど歩いて町に入り、役所、銀行、居酒屋などを通り過ぎると、ある建物が私の目に入った。「地部葬祭」だ。
お店の正面玄関の横に3台ほど停める事のできる駐車場があり、最も奥に営業車両らしきものがあった。営業車は少し塗装が剥げていたが、ワックスがしっかりされていて雨を弾き、大切に扱っていることが分かった。窓はカーテンで締め切っていたが、窓ガラス自体は少し開いていて、カーテンが濡れていた。建物自体は一階建てだが、奥行きがあり、塀の垣根は2m近くあったので、敷地建物含めてかなり大きく見えた。
なぜ私がこの地部葬祭に興味を持ったかは後に説明するが、とにかくこの店には「何か」あると感じた私は、この家のインターホンを鳴らした。

ピンポーン・・・ピンポーン・・・
2回・・・3回・・・4回・・・
出ない、やはり。
そう思った時だった。

ゴッ・・・ドサッという音が聞こえた。その時は、何か物を落としてしまったんだろうな、ぐらいにしか考えていなかった。
私は犬小屋の近くへ行き、大人しくしている犬に向かい、じりじり近寄った。犬は同じ目線で近寄ってくる相手を「敵」とみなし、吠えてくる習性があることを知っていたので、犬の鳴き声でお店の中にいる犯人をさらに緊張させた。そしてまたインターホンを鳴らして、犯人が扉の覗き口から見える位置に移動した。

ガチャ。

扉が開くと、明らかに視線の動揺した男が目の前に現れた。
(この男、犯罪を犯している。)
私はこの男が何かを隠していると直感した。勿論これは推理ではなく感覚的に判断したのだ。
問題は、何かを隠している彼を追い詰めるだけの『材料』が無いことだった。先ほど町に着いた私にとって、目の前の男の身元が分からなければ、被害者すらも分からない。この場合、探偵が使う手段は決まっている。

『ハッタリ』・・・つまり『嘘』だ。嘘によって、この事件の実際を暴く。
私と彼の駆け引きは始まった。


一つ目の嘘は、私がお客さんでは無いことだ。彼の油断に入り込むためには、どうにか客のフリをする必要があった。そのために宇多飼君を書類上殺してしまったが、事件解決のためには、まあいいだろう。

二つ目の嘘は、この地部葬祭の事務所は何の臭いもしていないということだ。普段の私は、犬のように鋭い嗅覚でどのような臭いかも判断できるか、生憎この雨を受けて鼻風邪になったせいで、「遺体の臭い」も「線香の臭い」もしていない。この嘘で、灰皿を落とすほど動揺したこの男が、やはり何かを隠しているということが分かった。

三つ目の嘘は、私がこの街の「事件」について何か知っているということ。
一つ目の嘘で分かる通り、宇多飼はこの村へは住んでいない。それどころか、今日私が捜査にこの町に来ていることさえ分からない。
至極普遍的な事だが、犯罪者は自らの罪を明らかにされ無いために、最も疑われないと思われる『一般市民』を演じようとする。それにより、『あの犯人はまだ捕まっていないんですか?』という私の問いに対して、彼は犯人だと思われたくない一心で、一般人として実際の失踪事件について話す以外に無くなったのだ。

ここまで来ると四つ目も分かると思うが、私はこの町の『黒い噂』なんて全く知らない。
とにかく『この町の裏事情に、私が精通している』ということを印象づけたかったのだ。これに対して、彼は焦りを隠せずに話の話題を変えてきた。これは、『黒い噂』の続きを話して欲しくないという気持ちの表れで、この町には『黒い噂』が存在して、彼が関与している可能性がある。

そして次の嘘こそが、最も重要だった。今までの彼の反応だと、彼が真犯人と断定することは非常に難しい。なぜなら、彼がただ『この手の話が苦手なオドオドした人間』と言われればそれまでだからである。
つまり彼が『真犯人である可能性』はあるが、彼が『真犯人以外ありえないという可能性』では無いからだ。ここで私は勝負の嘘に出た。

五つ目の嘘はあの『住所』だ。
勿論ここには宇多飼君が住んでいたわけでは無い。そして彼の反応から、間違いなく彼は今回私が捜査している事件に関係する人間というのが分かった。その捜査とは『麻薬』の捜査だ。
今回私は警視庁の上層部から極秘に依頼され、麻薬の売人である『猿渡』という人間の消息を辿ってきたのだ。その際に彼の元住んでいた住所。それが、志帆奈町5—3、みずほまアパート201だ。つまりこの住所は警察と私、そして犯人と関係のある人間にしか分からないはずの住所なんだ。

あきらかな動揺を隠せない彼に聞くことは、あと二つだ。写真の中国系の外人を知っているかどうかと、彼が犯人かどうかだ。
”すべての要件が終わり、帰ると見せかけて、思い出したように情報を聞き込む”という聞き込みの常套手段を使い、彼に写真を見せた。
六つ目の嘘は、この外国人の写真だ。私は当然この男のことは知ってるし、彼も「あの事件」に関与しているなら知っているはずだ。

しかし、ここで予想外な事が二つ起きた。

一つ目は、明らかな動揺は想定していたものの、その加減が常軌を逸していたことだ。その写真を見るや、嘔吐し、その場から逃避、そしてトイレに閉じこもるというのは、もう犯人であることを認めたようなものだ。逆にここまでの彼の動揺の仕方に、私は新たな推理を組み立てていた。
(彼が犯罪を犯したのは、ごく最近では?まさか、この店に入る前に扉越しに聞こえたゴッという音は・・・)
そう思うと、さらに私の推理が広がった。そして新たな可能性のために携帯で調べものをしていると、10分後にようやく彼はトイレから出てきた。

二つ目の予想外は、彼が別人になっていた事だ。
さっきまでの泡を食ったような青ざめた顔から、彼の顔は血色が良くなり、自信に満ち溢れた目で私を見つめている。おそらく彼はトイレの中で何かをして、成長したのだ。あまりの彼の変化に、普段は表情の演技に油断はない私が、ほんの僅か(0.01秒にも満たない一瞬)な私の戸惑った顔を見られた気がした。すると彼はこう言った。

「すみません。少し体調が悪くて。
外はまだ雨が降っています。どうぞゆっくりしていってください。」

(読まれた!!!)
私は彼の表情と発言に、次の私の手を読まれた気がした。いや、間違いなく読まれた。
こんなことは初めてで、私は次の一秒で自らの脳をフル回転させ次なる手を考えた。
このような男から自白の証言を取る事は非常に難しい。彼の自信を打ち崩し、犯罪を明らかにする方法は、決定的な証拠を出すか、もしくはもう一度彼の動揺を誘うしかない。次の7つ目の嘘で、完全に相手を打ち崩す。彼の挑発に乗るしかない。

面白い。
どうやらこれまでの駆け引きは、前哨戦に過ぎなかったのだろう。私の次の一言で始まる、本当の知能戦の前哨戦。
少し笑みをこぼした私は、先ほど座っていた椅子に歩み寄り静かに座ると、彼もまた音も無く座った。

「地部さん、私は全てを知っているんですよ。」
私の七つ目の『嘘』に、成長した彼は予想していたような笑顔をニンマリと作り、私に向けて言った。
「面白い。」

☆☆☆今日はここまで☆☆☆
春山の仕掛けた嘘を春山の視点からアプローチ。
完全に成長した彼の挑発に、7つ目の嘘をついた春山。
完全な知能戦がここから始まり、
物語は佳境を迎えます!!!
また来週もお楽しみに( ´ ▽ ` )ノ
(多少タイトルが告知と変わることもありますが、あしからず笑)

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