NSSBのブログ

NSSBの日々の活動や、 その時の気持ちを投稿しています。 小さなブランドですが、 今後県外や海外に大きく飛躍していく 成長日記となればと思っています。

NSSB小説

445.いい人のための教科書④私は成長する

445.いい人のための教科書④私は成長する

4.私は成長する


私の口元に抑えた手からは、胃液のようなものが飛び出した。
小学校の頃に初めてお話し大会に出た時に、何千名もの生徒がこちらを見ていて、極度に緊張し吐き気を催した、あの何倍もの重圧だ。
あの重圧を今たった一人の男に与えられている。そんな過去の思い出を走馬灯のように思い出しながら、どのくらい私は吐いただろうか。
洗面台の鏡を見ると、げっそりと痩せ細っている私がそこにはいる。もう吐くこともできなくなり、手元の震えに気がついた。それは先ほど外国人の男を殺した右手であり、その震えを左手で抑えようとしていた。
さらに膝は砕け、地面に倒れこむと、気を失ったように俺は目を閉じた。


目を瞑るとそこには真っ暗な世界が広がっていた。その中で不気味な光が襲ってきた。
今事務所にいるあの男の存在だ。彼の圧倒的な存在が頭の中を占領してしまいそうになった。
(うわあああああああああ・・・)
真っ暗な世界で俺は大きな悲鳴をあげた。これが現実に声が出ていたかは分からないが、全てに押しつぶされそうになった。
あらゆる五感が失われて、何も感じることができない。

もう終わりだ。


バウッ!!
その時、庭で飼う犬の「ジス」の声が聞こえた。
さらに奥から男の声も聞こえてきた。

Don’t be afraid(恐れるな)

Im beside of you(側にいる)


その瞬間頭の中にかつての僧侶が座禅を組む姿が浮かび上がった。
その存在は事務所にいる男の存在をかき消して、大きな光となって俺を支えた。

はっと目が覚めた俺の頭の中はスッキリしていた。5時間ぐらい睡眠を取った後のように、気持ちの良いものだった。
そしてスッと立ち上がると自然と体も軽くなっていた。私はあるものを探すために、2本の山積みにされたトイレットペーパーを崩した。全て崩すと、そこには小さな扉がある。私が特注で作らせた本当に小さな扉付きの本棚だ。そこには何冊もの古びた本があったが、迷わず『教本』を取り出し、一心不乱に読んだ。
その間トイレの扉を叩く音が数回聞こえたが、そんな事をお構いなしに私は読み更けった。
今の私におあつらえ向きの条文を何度も読み返した。


『教本』
第十条. 成長
ありとあらゆるものは常に成長して、それは発展する宇宙の流れに従うものである。その中でも感情の超越は最も困難な成長項目となるが、それを乗り越えた時に、教信者は人間を超越した宇宙的な存在として民を従える事ができる


どのくらい時間が経っただろうか。
気づくと私の目の前の景色は変わっていた。洗面台で見る私の顔は、明らかに若さを取り戻していて、神々しさが増してきている。
今直面している問題(あの男)が私を成長させて、人間を超越した姿へと導きつつあった。

そして私は振り返って扉に向かった。そして扉の側にいるこの男との対決に正面からぶつからなければいけないと思った。
もし私がこの男との勝負に勝った時、私は死者をも生き返らせる事ができる存在になるのかもしれない。
私は逃げない。私は成長する。


次だ。
彼の次の手を先に読み、私が彼よりも超越した存在になるんだ。
頭がすっきりしてきたところで、私は現状の把握を始めた。

彼はおそらく全てに気づいているわけではない。
全て事実スレスレの事をふっかけて、私の反応を伺っているんだ。

一つずつ考えよう。もしあの外国人を轢いた現場を彼が見ているなら、すぐにでも警察を呼んで捜索するはず。呼ばないということは、つまり見ていない。
ではなぜこの地部葬祭を訪ねてきたのか。偶然だろうか?
いや、2件の失踪事件について話し出していることから、この事件に私が関与している事を知った上で、ここに来ているんだ。そして2件の失踪事件には犯人がいることも示唆しているようだが、まだ確証は掴んでない。
さらにあの住所だ。つまり消えた麻薬の売人の猿渡についても私が絡んでいると思い、彼は私に住所をふっかけてきた。そのために、おそらく彼の知人(宇多飼さん)は、架空の人物、ないしは生きている人物を出してきたのだろう。


外国人・・・・
警察・・・・
2つの失踪事件・・・・
麻薬・・・・
消えた猿渡・・・・
その住所・・・・
そこから導き出される、彼の次の手は・・・・・

(フ・・・・フフフ
フハハハハハ・・・!!!!

読んだ!!!
彼の次の手を読んだぞ!!!!
読み切ってやったぞおおおお!!!

私は・・・・私は成長するうううう!!!)


ガチャ・・・

扉を開くと、彼は扉の横で携帯電話の画面を見て立っていた。
彼は顔を上げて、一目私を見た。彼の表情、特に私を見る目が微妙に動いたことから、分かった。私が成長したということを。
心中驚く彼の心を知り、彼の次なる手を読んだ私の余裕のある自信を持った声で、私は彼に挑戦状を叩きつけた。


「すみません。少し体調が悪くて。
外はまだ雨が降っています。どうぞゆっくりしていってください。」


☆☆☆今日はここまで☆☆☆
今回の話はある男の絶望と、そして怖いほど精神的に回復する様子が出てきました。
そして成長した地部は常に先の推理をする春山の次の手を読みきったという!
次回《第5話!知能戦と7つの嘘》を乞うご期待くださいませ( `ω´)/

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