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NSSBの日々の活動や、 その時の気持ちを投稿しています。 小さなブランドですが、 今後県外や海外に大きく飛躍していく 成長日記となればと思っています。

NSSB小説

368.先生は私のもの①女の一生

368.先生は私のもの①女の一生

先生は私のもの



①女の一生



暗い部屋。

彼女は一人、その情念を燃やした。

愛と憎しみを込め人を死に至らしめる薬を手に持っていた。


「先生は私のもの。誰にも渡さない。」







私の名前は、古賀恵。
大西女子大学に通う2年生。

目の前の白紙のA4用紙に向かい、
自分の短い人生を思い返す。





両親は離婚して、母親との生活も上手くいかない高校時代。

新しいお父さんは、母親のいない間に、
私に色目を使ってくる。

守ってくれる人が欲しくて、高校の頃に付き合った彼は暴走族のメンバーの一人。

でもその彼も私に子供ができるとすぐ離れていった。

子供を下ろし、辛うじて高校を卒業した後は、母と同じく夜のお店で働いた。


その後とある不動産会社の社長さんとの付き合いで、私はお店のトップに花咲いた。

当時20歳の私にはお金も男も集まってきた。

何でも手に入るようになってきた頃だった。
現役女子大生の中学の同級生とたまたま出会い、大学に憧れた。そして全てを捨てて大学に入った。





授業なんて最初はつまらなかったけど、今は学校が楽しくて仕方ない。


それは今受講中のとある授業が、

いやこの授業の先生のおかげで楽しくなっている。







「夫婦の話をしましょう。

彼女は、夫のジークに尽くす良い妻だったし、ジークはそんな妻を愛し、幸せな生活はこれからも続くはずだった。

しかし4、5年経てば、大概の夫婦がそうであるような倦怠期を迎える。

近頃は燃え上がることもなく、妻とベッドを共にすることもなくなった。



つまり『女として見ることが無くなった』といえばわかりやすいだろう。



しかし先ほど言ったように、彼女は妻として申し分なく、別れるつもりなんて毛頭ない。



この問題はどうやって解決するのだろうか?」







長身でさらっとピンクのシャツを着こなすこの大学の講師は、教室を見渡した。

35歳を越えていると思えない童顔の甘いマスクは、講義室最前列に座る、一人の男子学生に向けられた。



「君はどう思うかな?

この夫は、自分のフラストレーション(欲求不満)を、どのように満たせばいいのだろう?」





いかにも冴えなさそうな男子学生は戸惑いながら答えた。

「え〜と、奥さんに下着をプレゼントする・・・とか?」





講義室に、どっと笑いが起きた。

照れている男子学生にイケメンの講師は、笑いながら答えた。





「とてもユニークな考えだね。自らの意思表示と、妻の気持ちを高ぶらせるための勇気ある行動だ。勿論間違いでは無い、答えの一つだ。



でも事態はもっと深刻なんだ。

妻は女として今まで通りつくしているし、結婚当時と変わらない。

妻としての部分は十分満たされているんだ。


でも夫は『女』の部分を求めている。

問題はジークの心の中にあるんだ。



その中でジークはどうするべきかな、

古賀君?」


皆の注目が私に集まる。

講義室の前から3列目右端は、私の指定席。

彼も私の席を分かっていて、私に視線を送り、私も彼の視線に答える



「夫が浮気をするんです。」



私の答えにクラスはどよめいた。

私の笑顔に答えるように、彼もまた笑顔で答える。





「そう、夫ジークは浮気をするんだ。

『仮想浮気サービス』というのがある。


これは実際に人間と関係を持たず、バーチャルな環境を作り出し、人間そっくりの相手と寝るサービスだ。本物のような感情を与えてくれる。





これは本物の人間では無いので不倫では無く、妻に対する裏切りでもない。

その中で自分も欲求を満たすことができる。

したがってこのようなサービスは、結婚している自分でも。何の問題でない、というのが夫ジークの言い分だ。





皆さんは、夫ジークの行動を理解できるだろうか?

不倫についてどのような考えを持つだろうか?

そもそも不倫とは何か?


この日本では一夫一婦制のみ認めているから、中々受け入れられない考え方だよね。

でも一夫多妻など認められている地域も多い事は事実である。



倫理観は、時間や環境と共に変化する事を学習した上で、皆さんも自分なりの哲学的な見解を持つ事を願いたい。」







彼の名前は、心理学者の遠藤 彩皇(さいこ)。

彼の講義は、毎回講義室をいっぱいにして、9割型女子学生だ。

彼の魅力は、容姿、博学に尽きるところを知らず、心理学を踏まえた会話が面白い事にある。





そして私個人は、夜も彼の魅力に取り憑かれていた。



「今日も面白い授業だったね。

でも周りの皆んなに私達の関係がばれちゃうかもね。」

彼の腕に抱かれた私は彼を見つめて言った。

「ばれたら仕方がない。
僕はジークとは違う。」




「私先生のためなら何でもするよ。先生は私のものだよ。」

「ありがとう。」




私達の秘密で甘く、そしてイビツな関係は、常識的にはいけない事だったのかもしれない。

でも私の素直な気持ちを受け止めてくれる彼は出会ってきたどんな男性よりも魅力的だった。

私はやっと行き着くべきところに来たのかもしれない。

死ぬまで彼を愛そうと、そう思えた。











僕の名前は、榎本正義。
今年警視庁に入庁したばかりの新米刑事。

ここは都心の大西地区。
周囲には大学やアパートが立ち並んでいる。

この奇怪な事件の始まりは、一人暮らしの女子大生、古賀恵の遺体が見つかった事から始まった。







「警視庁の岡野だ、通してくれ。

榎本、害者の状況を。」





この人は僕の上司である岡野警部だ。

彼は正義感が強く成績は優秀だが、出世欲が強く高圧的で、警視庁の同僚からは彼を嫌うものもいるそうだ。







「えー、被害者の名前は、古賀恵。

大西女子大に通う23歳の大学4年生です。

死因は青酸系化合物の摂取によるものだと思われます。

死後丸1日経過していますね。」



僕は鑑識から聞いた内容を答えた。

「部屋の窓と玄関には鍵が掛けられていたか。第一発見者は?」

岡野が遺体を見ながら質問した。



「あ、はい!第一発見者は大学の同級生みたいです。昨日は友人の誕生日パーティだったのですが、被害者は現れず、連絡も取れなかったので、今朝、様子を見に来たら、亡くなっていたそうです。」

「ん?玄関の鍵はどうしたんだ?」

「台所に小さな窓があり、そこから被害者が横たわっている様子を見て、大家さんを呼び、鍵を開けてもらったみたいです。」


「なるほど、自殺か。」

「あ、いえ。被害者の証拠品から、こんなものが見つかっています。」

僕は鑑識から渡された、くしゃくしゃに丸められたA4用紙を岡野警部に見せた。


「何だこれは?」

そこには一言、ワープロでこう書いていた。





「先生は私のもの」




身の毛もよだつこの一言は、
勢いを増し、更なる被害者を生み出していく。

警察はこの一言に振り回され、
最終的に大犯罪者を世に知らしめる事件へと発展する事になる。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
今日はここまで!
小説第3弾のテーマは「心理学」
男と女、その人間模様。
その中で続く被害者は自殺か、他殺か。
遠藤という男が今回キーとなってくる!!
第二話は来週木曜日!乞うご期待

(参考)
100の思考実験 紀伊國屋書店
4.仮想浮気サービス p31より

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